改正道路交通法、知らぬ間に摘発対象とならぬようこれだけ知っておく。


まず、2009年(平成21年)6月1日から施行された「改正道路交通法(改正道交法)」のポイントを整理しておきます。


改正の主な狙いを一言でいえば、「飲酒運転・危険運転の行政処分強化」です。

以下の3点が、2009年(平成21年)6月改正のポイントとなります。

違反の前歴・累積点数の有無によっても、違反点数(基礎点数)が変わる点は注意してください。



2009年6月改正道交法のポイント



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(その1) 酒酔い運転・酒気帯び運転の、違反点数の大幅な引き上げ

酒酔い運転

違反点数を「35点」に引き上げ(従来は25点)

酒気帯び運転

呼気1リットルにつき「0.25㎎以上」の酒気帯び運転 → 「免許取消し」(違反点数25点)。
呼気1リットルにつき「0.25㎎未満」の酒気帯び運転 → 違反点数「13点」(従来は6点)。


(その2) 悪質・危険な運転および違反行為
特定違反行為)に対する、違反点数の大幅な引き上げ免許の欠格期間の延長


違反点数は「結果の重大性に応じて変わります

たとえば、

- ひき逃げ35点+事故の責任点数(従来は23点)
- 故意による人身事故(危険運転致傷) → 45~55点(従来は45点)
- 故意による死亡事故(危険運転致死) → 62点(従来は45点)

に、それぞれ引き上げとなります。

危険運転致死傷」「酒酔い運転」「ひき逃げ」などの免許欠格期間は「3年10年ひき逃げの場合)」となります。

欠格期間の最長年数も延長されて、これまでの「5年」から「10年」になりました。


(その3) 75歳以上のドライバーの免許更新時、「講習予備検査(認知機能検査)」を義務づけ


75歳以上の方は、免許の更新時に記憶力・判断力など「認知機能」の低下の有無を確認する30分程度の「講習予備検査認知機能検査)」を受けなければなりません


講習予備検査は「更新期間満了日前の6ヵ月以内」に受けなくてはなりません。

検査の結果「認知症と診断された場合、運転免許が取り消されます

(検査で記憶力・判断力が低下していると診断されても、その場でただちに免許取消となるわけではありません


しかし、検査の前後一定期間内に一定の交通違反がある場合で、かつ専門医が最終的に「認知症」と診断した場合には、免許が取り消されることになります。)


検査の後は結果に応じて「高齢者講習」を受け、更新手続をとることになります。


高齢者講習の受講期間
も、「更新期間満了日前の6ヵ月以内へと3ヶ月延長されました。



さて、以下からは2008年(平成20年)6月からすでに施行された改正道交法のポイントですので、あわせて押さえておきましょう。


2008年(平成20年)6月改正の狙いは、「自動車・自転車事故被害軽減のための、安全強化」にあります。

政府は現在、「2012年(平成24年)までに、交通事故死者数を5,000人以下にする」という目標を掲げています。


なお改正に先立って、2007年(平成19年)9月に「悪質・危険運転者対策」としてドライバーにお酒を提供した者や、飲酒運転と知りながら車を提供あるいは同乗した者「飲酒運転幇助(ほうじょ)行為」として、厳罰化しきびしく取り締まるという罰則の整備がなされていることは、すでに皆さんご存知のとおりです。

2008年(平成20年)6月からの改正道交法は、それに続くものとなります。



細かい部分まで含めると以下の他にもあるのですが、ドライバーとしてバスやタクシーの乗客として、さらには「自転車」の運転者として知っておくべきポイントは大きく以下の3つとなります。


これだけは、ぜひとも押さえておくようにましょう。


2008年6月改正道交法のポイント その1   「後部座席者」のシートベルト着用義務化



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2008年(平成20年)6月改正の道交法における「最大の目玉」とされるものです。

「車の後部座席におけるシートベルトの着用」が、義務づけられました。

それ以前は、運転席や助手席においてシートベルトの着用義務がありましたが、後部座席においては「努力義務」にとどまっていました。


改正道交法で、これが正式に義務づけられたわけです。

幼児や子供の場合は、チャイルドシート着用が義務づけられることになります。


なお「妊婦」については、道交法施行令において「妊娠・肥満・けがなど健康保持上の理由がある場合」にはシートベルトの着用義務が免除されており、していなくても道交法上の違反にはならない、とされています。

しかし、海外での事例研究なども進んだ現在、妊婦がシートベルトを着用しない場合は、事故時の母体・胎児への危険性が高まることが指摘されています。


「妊婦であっても、シートベルト着用は原則として必要」であることをおぼえておきましょう。
この場合、おなかの膨らんだ部分(子宮)にかからないように、肩・腰周りにシートベルトを装着します。


さて、シートベルト着用義務化の狙いは、後部座席者が車外に放り出されたり、あるいはドライバーに後ろからものすごい衝撃でぶつかってこられることによる事故等の被害を減少させることにあります。


後部座席者がシートベルトを着用しない場合の事故による死亡の危険性は、着用時に比べておよそ3倍に増加します。


JAFの実験データによると、後部座席者がシートベルトを締めていない場合で、時速40kmでコンクリートの壁に車が衝突すると、かかる衝撃は体重の30倍以上にもなるそうです。

また、ドライバーや助手席の人に後部座席者がぶつかった場合頭部に重傷を負う確率も、後部座席者がシートベルトを着用の場合に比べて、なんと「51倍」にもはね上がるとのことです。


しかし、それにもかかわらず、後部座席におけるシートベルトの着用率はいまだに極めて低く、昨年の警察庁の調べによると、全国平均で昨年はわずかに8.8%(一般道路)、13.5%(高速道路)というのが現状です。


なお罰則ですが、一般道路における違反での処分はなく、「高速道路・自動車専用道路での違反」が取り締まりの対象となります。


違反があった場合は、運転者に対して「違反点数1点」が課せられます。


高速バスやタクシーに乗客として乗った場合、乗客がシートベルト未着用の場合は、「ドライバー」が処分の対象になります。ただし、高速バスのようにたくさんのお客さんが乗車する場合などは目が行き届かないこともあり得るため、ドライバーに処分がストレートに課されるのかどうかについては、今後明らかになっていくものと現状です。


しかし、道交法改正について知らない乗客がまだまだ多いはずであり、シートベルトをつけるつけないで乗客との間でトラブルになることを恐れるバスやタクシーの運転手が多い、との報道もなされています。


先に述べた「後部座席におけるシートベルト着用率の低さ」に加え、改正道交法の浸透がこれからの話になることを考えても、この心配は現実のものとなる可能性が高い、と言えるでしょう。


将来を考えてか、罰則のない一般道を走る場合でも、乗客にシートベルト着用を促す方針をとりはじめているタクシー会社も、すでに出てきています。

夜間の繁華街などで近距離タクシーを利用する乗客との間にトラブルや混乱が起きぬよう、改正道交法の周知徹底がスピーディにはかられる必要があります。


2008年6月改正道交法のポイント その2  高齢運転者に「もみじマーク」を義務づけ(しかし2009年6月改正で撤回され、努力義務に戻りました)



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75歳以上の高齢者の運転者および聴覚障害者は、運転時に「高齢運転者標識」(通称「もみじマーク」)、聴覚障害者は「聴覚障害者標識」(通称「聴覚障害者マーク」)の表示を義務づけました。

75歳以上の高齢者による事故数が、年々増加していることを受けた措置としてスタートさせたわけです。

(ちなみに「もみじマーク」は以前からありましたが、「聴覚障害者マーク」は2008年(平成20年)6月から新たに登場しました。これら「もみじマーク」や「聴覚障害者マーク」のステッカーは、お近くのホームセンターやカー用品店で購入できます。)


「もみじマーク」表示の違反者に対しては罰則または科料を適用する予定でしたが、国会で可決された2009年(平成21年)6月施行の改正道交法により撤回され、ふたたび努力規定扱いに戻りました。


この標識をつけた車に対する幅寄せや割込みは(従来から)禁止されていますが、その場合に適用される罰則は5万円以下の罰金「違反点数1点と反則金6,000円」となります。


また道交法の改正により、一定の聴覚障害を持つ方も、「聴覚障害者標識」を表示して後方確認用のワイドミラーを車内に装着すれば、普通免許の取得が可能となっています。


2008年6月改正道交法のポイント その3  自転車の利用者に対する3つのルールを新設



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「自転車」の運転においては、以下の3つがポイントになります。


  1.  13歳未満の子供や70歳以上の高齢者自転車を運転する場合は、歩道通行が認められる。
  2.  それ以外の人たちであっても安全確保のためにやむを得ない場合自転車による歩道通行が認められる。
  3.  13歳未満の子供が自転車に乗る時は「ヘルメット」を着用させることが、保護者・同乗者の努力義務となる。



1においては、自転車は道路交通法上は軽車両とされることから、現在は車道の左端か路側帯を走ることが原則となっています(ただし、自転車通行可の標識がある歩道を除く)。また「通行可」となっていても、歩行者を優先しなければなりません。しかし、一定年齢の子供と高齢者を、車道通行の原則からはずしたものです。


2.の「やむを得ない場合」が具体的にどういうケースを指すのかについては、現在警察庁からいくつかの例が出されています。

その例示によれば「やむを得ない場合」とは、道路工事や駐車車両で通行が困難な場合や、車道の幅が狭く自動車と接触する危険がある場合、などを指すとされています。

しかしながら、今後は解釈上微妙なケースが増えてくるだろうといわれています。

自転車においては「歩行者優先」の考え方が基本にありますので、自転車が歩行者にチリンチリンとベルを鳴らし、自分のために道をあけるよう促すのも、「歩行者通行妨害」として、取り締まりの対象になります(2万円以下の罰金または科料)。


また、母親が自転車の前後部に子供をのせる「2人乗り」や「3人乗り」も、問題ないと勘違いする人がいまでも多いのですが、現在においては、都道府県の公安委員会規則においてはっきりと禁止されています。


現時点で認められているのは、後部座席に6歳未満の幼児を1人だけの「2人乗り」までなのです。


加えて、「自転車を運転しながらの携帯電話」「傘を差した状態での片手自転車運転」も、取り締まりの対象となります。


ごく普通に見かける光景であったとしても、ちゃんと取り締まりの対象行為になっていることは、ご存知でしたでしょうか。


自転車といえども違反行為に対する罰則は以下のとおり、かなりの厳罰となっています。
あまり知られてはいませんが、道交法上の規制はほとんどの自転車にもあてはまるのです。

 ・自転車の飲酒運転  5年以下の懲役または100万円以下の罰金
 ・信号無視・一時停止違反  3カ月以下の懲役または5万円以下の罰金
 ・携帯電話の操作や傘をさしての片手運転による違反  3カ月以下の懲役または5万円以下の罰金


実は自転車の場合には、自動車・バイクに対して行うように、比較的軽い違反に対して前科とならない反則金を科す「交通反則切符」(いわゆる青切符)の適用がありません

ですから、自転車でのあまりに悪質な違反に対しては、ストレートに刑事処分につながる「交通切符」(赤切符)を切るしかない仕組みになっており、現実に摘発も行われています。


自転車による飲酒運転やひき逃げにおいては、逮捕者も出ています。
過去、自転車による歩行者との人身事故で、裁判で数千万円の賠償金が命じられたケースも、現実に何例もあります。


ちなみに上で述べたように、母親が自転車に子供を二人のせて幼稚園などへの送り迎えをするいわゆる「3人乗り」ですが、これは現時点では、道交法上は明らかな違反となります。

しかし、「このままでは子どもの送り迎えの手段を失う」との抗議の声も大きくなってきたこともあって、このようなケースでの「3人乗り」を近い将来容認・解禁する方向で、警察庁は検討をはじめたようです。


現在、警察庁は関係団体や自転車メーカーなどに対して、安全性の高い3人乗り専用自転車の開発および普及を要請しているとのことですが、現時点では法律上はまだ道交法違反(乗車制限違反)扱いになることを知っておきましょう(ちなみに罰則は、「2万円以下の罰金または科料」となります)。

さらに、解禁の方向にあるからと言って、若い男女が自転車で2人乗りなどをしているとこれは確実に指導・摘発の対象となりますので、勘違いしないようにしましょう。



最後に、残念ながらあまり知られていませんが(笑)、平成19年7月に警察庁の交通対策本部で決定された「自転車安全利用五則」をご参考まで記しておきます。


【自転車安全利用五則】

  1. 自転車は、車道が原則、歩道は例外
  2. 車道は左側を通行
  3. 歩道は歩行者優先で、車道寄りを徐行
  4. 安全ルールを守る
      - 飲酒運転・二人乗り・並進の禁止
      - 夜間はライトを点灯
      - 交差点での信号遵守と一時停止・安全確認
  5. 子どもはヘルメットを着用




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